2007年3月31日土曜日

新国立美術館:巨大貸画廊?


新国立美術館に行った。作品を持たず企画にあわせて作品をイベント的に借りてきて展示をするのだそうだ。百貨店の催事場でやっている「XX展」を大きくしただけとしか思えない。しかも、ほとんどの作品は過去に国内のどこかの美術館で見たものばかりだ。「箱」は少しも不足していない。美術館の役割は沢山あるがその大切なことの一つが芸術家の育成(作品の買上)と保持と収集だ。ルーブルが新しくなったから負けたくないだけじゃないのか?これだけの「箱」を作る予算があれば多くの作品を国立美術館の方で所蔵し美術界の育成に貢献出来たと思う。それが「美しい国」創りだと思う。
そう言えば、美術館と言う言葉は英語圏では「Museum」のなかの「Museum of art」に分類され、他にも「Science Museum」とか、「Museum of Natural History」あるいはもっと大まかに「大英博物館British Museum」といった具合になる。わが国では逆にこれらを総称する言葉は慣用的にはなく「博物館」「科学館」「民芸館」などと初めから分かれている。但し法律では、<「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般 公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関>と英語のMuseumと同義だ。
Museumを語源で辿ってみると、アレクサンドリアに創設された総合学術機関<ムセイオンmouseion>だが、Museum=博物館の発祥は定かではない。どうも、ギリシャやローマの将軍たちが戦利品を見せびらかすために部屋に集めて展示したのが始まりのようだ。有力な都市が,コレクションを納める宝庫をもち,特定の人々に見せたことも知られている。心理的にはハンターが射止めたライオンの頭を剥製にして壁に飾るのと共通しているかもしれない。市民にとっての美術館はフランス革命後にルーブルとして王室のコレクションを公開したことが始まりのようだ。わが国では神社の宝物殿にその原型が見られる。祇園祭りの宵山で鉾をたて町内の老舗が家宝をお披露目しているのもこのミニ版といえよう。いずれにせよ、分捕ってきたか、搾取して収集したのが始まりのようだ。文明が進むにつれ分捕ってきたり搾取してきた富が貨幣と言う形になってパトロンとして作用しだしたのだろう。
Museumは、略奪や搾取してきたものの自慢から、芸術の収集と育成にその役割を20世紀に変えることとなった。21世紀は果たしてどうなのだろう。新国立美術館はその解答の模索かもしれない。